HDR考 #3 2003年12月9日 宇都宮 泰 ’04年9月30日改訂 #2では実際のHDR製品についての実測例と傾向を、主として専用機について検査結果を中心に述べた。その結果、数値や諸元についてFrケ具選びの本質だからだ。)解説を含め論じてみたい。 竄「合わせてもUNDOなど滅多な事では使わない者がほとんどだからである。ならば設計者やメーカーの勇み足なのだろうか。 とにかく我々はFragmenntationのメリットに慣れすぎており、その問題点や、引き換えに失った物を忘れているように思える。ここでDe-fragmentationの特徴について再認識を試みたい。その特徴を列記すると、 1)セクターを用いる以上、厳密には不連続であるが、セクターの並びそのものは連続している。 2)FAT管理されないので、FAT異常によるトラブルが発生しない。 3)ヘッド・シークが常に隣接したシリンダ同志での移動なので、シークに無理が生じない。4)破壊編集なのでメディア上の絶対位置が確定できる。 gが不規則の場合(Fragmentationの場合)大容量メモリーが必要となる。これは単なるメモリーコストの問題ではなく、操作命令に対する反応速度にも大きな影響を及ぼす。つまり1)によりDe-fragmentationのシステムでは操作に対して大変素早い反応が得られるのである。感覚的には多くのアナログMTRと同等か、それよりも素早い印象である。 実使用時にその素早さが要求される再生スタート、録音スタート、パンチ・イン、パンチ・アウトについて、PCベースやミキサー一体型でもおよそその要求はかなえられているようであるが、それ以外の操作、特に停止に対する反応の遅さはうんざりするほどで、その時間を積み残しデータの書き込みやFATの作成にあてていることを理解していても承服し難く、不安すら覚える。操作に対する素早さは、操作者にとってのマシン内部動作のバロメータであり正常度合の暗示である。また、操作者の多くは音楽演奏の嗜みが有り、マシンの操作というより「楽器の演奏」のように認識したがる。とくにパンチ・イン、パンチ・アウトは操作手数こそ少ないものの、まさに一撃必殺の打楽器のようなもので、レコーダーの好みを分析してみると、このあたりの反応具合が関係していることがよくある。A機の場合停止をはじめとする全ての操作が瞬時であることは言うに及ばず、システムの起動、ドライブの着脱がそれぞれ10〜15秒程度と素早い。リコールされる各種パラメータはボタン操作と全く同時に、書き込み更新が実行される。(これも驚くべき設計指針である。基本的にユーザーの「終了操作」など、あてにしていないのである) ある意味この「操作の軽さ」はイマジネーションや信頼に直結する重要な要件かもしれない。 1)によるメリットとしてシステムコントロールプログラムのアルゴリズムが単純化されその結果プロセッサの稼働率とヘッド・シークに余裕が生じ、その分他の作業ができる。 A機の場合A/D/A変換と内部ルーティングによる遅れ=1.3ms、の補正に使用している。先に記述したようにアナログ出力した信号を、別のトラックのアナログ入力に送り録音した場合、つまり、あるトラックを再生しモニターしながら演奏を行い別のトラックに録音した場合、普通ならこの遅れが生じるが、その遅れを解消することを目的に、読みだしたセクターよりも1.3ms分若いセクター番号に記録する、つまりダブル・シークすることに使用している。このような目的にヘッド・シークの余裕を費やしているマシンは、筆者の知る限り他に存在しない。 **アナログ・マルチ・レコーダーの場合、各トラックはテープ幅方向にインライン配置されているために、原理的にこの遅れは発生しない。** このセクターの隣接は、各トラック、時間軸について確保されるため、それぞれのサンプル一つ一つにタイムスタンプを添付したのと同等の安全率が確保できる。これにより時間軸精度がオーバーオールに高まり、編集時や再生時の同時性が極めて高い。このことは検証データでも確認できる。 *** 主観的な評価であるが、どちらのシステムであっても理論的には、必要十分なメモリー容量を使用する限り、バーストの不連続性と出力音の関連性は吸収され、出力される音は同等になるはずである。ところが実際に聴いてみるとバーストが規則的であると、「滑らかな発音」の印象がある。即ち音が良いと感じられる。もちろんコンバータの違いやその他の問題も影響があるが、A機は滑らかに感じられ、B機は時間軸上のジャギーを私は感じる。またB機は編集が進みFragmentationが進むほどその傾向が強くなるように感じられる。それがジッターなのか、歪みなのか今のところ数値化も機構も解明できていない。・・・注3 *** 2)事実上FATが無いため(セクターは常に一つずつ順に使用されていくことから、ファイルの管理情報としては、開始セクターと終了セクターの位置情報が失われなければ正常再生できる)従来FATが原因で発生する異常は、根本的に発生しない。例えば録音中に電源が遮断したり、異なるシステム(例えば別機種)でFATを書き換えられても、多くの場合致命的損傷につながりにくい。 A機の場合、開始セクターと終了セクターの位置情報(他機種の場合FATに相当する″管理情報″とみなせる)を書き込むタイミングであるが、まず″ソング″を初期化した時点で開始セクターが確定、終了セクターは暫定的に確定され、録音が開始される。録音が終了した時点で終了セクターは先の暫定版から更新される。同時に終了セクターの数値更新は、数値が増大の時のみ行われ、減少時には更新されない。しかし他機種同様終了セクター情報更新時には「事後承諾」的に録音後に書き込まれることから、「ソング延長中」には電源遮断に対しては耐性が無い。保証されるのは(ドライブそのものの機械的損傷の問題があるため、A機のメーカーは保証しているわけではない)ソングサイズが確定している部分についてのみ(一度でも録音されたことのあるソングの長さについてのみ)である。 従ってライブ録音などで、この電源遮断に対して有効な状態にするには、あらかじめ想定される時間分「空録音を実施」しておく必要がある。未確認ではあるが、現時点でOSのバージョンは1.17版であるが、初期のバージョンではこの手順が現在と異なり、ソング初期化時点で終了セクターを指定するシステムであったらしい。その範囲内で電源遮断に耐性を持たせていたようである。 驕j 3)ヘッドに高い運動能力が要求されない。同時に長寿命が期待できる。また編集作業が進んでも、ヘッドの運動量は増大しない。運動量は常に一定である。そのため総合的に高い信頼性が得られる。MTBF計算ではFragmentationと比較して1/100以下の故障率だとか。 この問題も他機種やPCベース、ミキサー一体型に於いて、録音開始時には何の問題もないのに、作業が進につれ、動作が重く鈍くなりやがて突然音が途切れるようになったり、エラー表示が出て(あるいはエラー表示も出ずに)作業続行が困難になる、などといった「現象」が表れることがある。また、デフラグを行った途端に動作不能に陥る(大容量ドライブを用いて長時間(3〜4時間以上)のソングを扱おうとしたような場合に)ことがよくあるが、De-fragmentationのマシンでは原理的にそのような事態には陥らない。 Fragmentationのシステムでは編集や修正が進むほど分散化が進み、長時間ソースになるほど同様に分散化の度合が高くなる。 ** 注意しなければならないのは、1曲5分のスタジオ録音と3時間のライブ録音では、事情が全く異なるのである。最初の現場録音が無事ニくにFragmentation機の場合。 ** De-fragmentationのマシンでは1曲20秒であろうと8時間であろうと、その中身を把握する人間の側の負担が増大するだけで、レコーダー、あるいはヘッド・シークにとっては何の負担増大も無い。また、どれだけ編集作業や修正を加えようと、ヘッドは内周から外周に向かって(またはその逆に)ゆっくり進んでいるだけである。編集や修正、時間に何等の影響も受けないのである。筆者は24トラックで1ソング5時間を越える録音にもA機を用いているが、あらゆる作業を経過しても何等の問題も生じていないし、その兆候もない。A機の場合には最大23時間に対応できるようであるが、そのような要求のある録音チャンスを心待ちにしている。 B機も同様の目的に並行して使用していたが、作業の冒頭部分で能力不的確と判定し作業から外した。(コピー/ペーストの時間軸精度が悪いことが原因だが)MTBFで100倍以上の寿命信頼性というのは、まんざら大袈裟では無いような気もする。 実際に他のHDRやPCで使用できなくなったドライブをA機に接続し試用してみると、何の問題も無く使用できることがよくある。ただしヘッドやスピンドルモータが破損している場合は使用できないが。 A機のFormatコマンドには2種類の Quick Format と Long Format がある。Quick Format は文字通り1秒以下でフォーマットできる簡易コ鞄魔キる。先の他HDRやPCで使用されたドライブには使用できない。 度と、比較的高速。不良セクターがある場合は入念に検査しているのか、大幅に所要時間が延びる。 フォーマット後に新たに不良セクターが生じた場合、それが録音中の場合録音作業を停止する(停止した場合、再び録音ボタンを操作することでその不良セクターをパスし、次の不良セクターまで録音再開できる)。このことから、録音中であっても単なる一方的録音なのでは無く、p中に、「異常が発覚したのは録音が終了した後」という苦い思い出が私にはある。 ただ、A機のメーカーに要求したいのはこのような停止をした場合、何等かの「派手な」表示や警告出力が欲しいところではある・・・・。 4)ディスクの内または外周から規則正しく順番に使用され(注1)、時間対ディスク上の絶対位置が特定できることから、アクセスの遅い内周は使用しないとか、苛酷に使用された部分は使用制限し保護するなどの対応ができる。万が一特定の場所で異常が何度も起こる場合、そこをアクセス禁止に指定することも可能であるが、Fragmentation機では無意味なことである。 そのことにどれだけの価値があるのか、疑問の声が聴こえてきそうだが、様々なイマジネーションとは確定できる(あるいは仮説を立てることができる)事柄からの高次思考である。音楽の思考とは「時間」をどのようにまな板に乗せるか、であることから、その大前提として時間を認識できるようにすることが基本である。即ち西洋音楽に於いては譜面の登場によって(楽譜という平面のX軸によって)時間を「手に取る」ことが可能になったことで、選ばれた者以外には思考が困難であった「音現象」を「記号論的思考のテーブル」に乗せることができるようになったのである。 ピエール・シェフェールの提唱するミュージック・コンクレートに対しても、私には独自の解釈がある。彼は音楽理論の延長線上で記号論的に自らの提唱を行っているように思えるが、実際に彼のアイディアの本質は、制御不能の一過的現象である「その音」を、具体的に手に触れることのできるレコード盤やテープに定着することで、「万人に思考が可能」にしたことだと私は思う。つまり「思考のパレット」に乗ったのである。「思考のパレット」に乗らないものを我々は思考することはできない。 DATでもCDでも、今、自分が着目している、その音のメディア上の絶対位置を意識できる。しかし、MDやPCベース(ただしソフトウェアにもよるが)では、その実感が無く、「その音」と自分との絆が希薄に思える。相手の健康状態を気遣おうにも、わずかな情報である数値や視覚的波形表示では実感が湧かないし、それを信用しても多くの場合「音の感覚」とは程遠いものがある。私は道具であるレコーダからの出力音だけではなく、そのメカが発する微妙な機械音にしばしば耳を傾ける。恋人の心音に耳を傾けるようなものか。C機を暫定採用することを決めたときも、最終的には(無論、諸特性はその当時では優れてはいたが)その動作音で決めたが、音の絶対位置が判然としないという点で釈然とせず、正式採用には至らなかった。その点ではPCベース機のほとんどは論外であるし、C機も含めて致命的事故を回避できなかった。A機では絶対位置が計算上でも感覚的にも、整理チャート上(私はcueシートの上位階層の管理書類を考案した。記載内容は表形式で、項目は整理番号、曲及びタイトル、録音またはデュープ日時、定義トラック数、使用時間、その時点での残容量、バックアップ関係。それ以外にドライブの型番、S/N、などと履歴。ドライブ一台毎に1枚割り当てる)でも確認できる。つまりそのドライブに発生する異常を予見し、いち早く対策を講じることが可能で、しかもリスクの多い領域(アクセス速度が内周では遅い)はあらかじめ回避できる。別の言い方をすれば気遣うことが無意味ではないのである。 言葉巧みに説明できないが、この気遣いはアナログテープの時代には常識的に行っていたことであり、そのような気遣いが完成作品の品質に影響を及ぼすことを私は知っている。この気遣いや絶対位置の認識というような数値化できない持ち味は、操作者との高次なリンク(楽器などでは必須)と言えるかも知れない。SFアニメ的には「神経接続」かもしれない。 1)と3)から、従来不可能であったリアルタイム逆回転、可変速シャトル・サーチ(編集ポイントの検索や頭出し用と思われる。正逆1/凾ェ可能となっている。 ** De-fragmentation機の問題点 1) 当然のことながら破壊編集となるので、UNDOが困難である。 A機ではこの問題に対して2つの対策が講じられている。一つはUNDOというコマンド名称で使用する、「書き換え前の情報」を専用のUNDOバッファー領域に待避しておき、UNDOを要求された場合に、操作レジスタの内容から元どおりに復元することと、もう一つはセカンドドライブ(A機には2台のホットスワップ可能なドライブが装備されており、どちらもマスター/スレーブなどの概念の無い対等な扱いである)へ高速でバックアップを作成する機能である。その速度は48トラック換算で1倍速、つまり24トラックならおよそ2倍速、12トラックなら4倍速、8トラックなら6倍速、2トラックなら24倍速なので、それなりに高速と言えるだろう。 UNDOはこの説明どおりのプロセスなので大変遅く、あまり使いたくなくなるような使用感ではあるが、一応完全には復元できるようである。UNDOバッファーの容量が小さいため(1トラック換算74分分)使用が制限される。また、UNDOが有効なのは編集作業についてのみであり、新たにどこかのトラックに録音されたものや、パンチイン/アウトで録音したものはUNDOできない。 所見)どうやらUNDO機能が弱いかわりに、強力なバックアップ機能を搭載してあるので、通常作業ではバックアップコピーを小まめに取りなさい、という設計者のメッセージのようなものが受け取れる。バックアップを取らずにいたため、必要な部分が消失したとしても、それは使用者の読みの甘さであると言いたげであるが、そのUNDOの弱さと引き換えに安定した動作と信頼性が得られるのなら、私には何の不満も無い。 2) ディスクの効率的使用が(節約)できない。 他の「非圧縮」をうたった多くの機種が、使用したトラックの音の有る部分だけでセクターを消費し、無音部分や未使用部分ではセクターを消費せず、結果として容量を節約できるというものである。 De-fragmentation機では音の有無やトラックの使用/未使用状況に応じたセクター節約は起こらない。逆に言えばこのような「節約」は圧縮ではないのだろうか。ならば、De-fragmentationこそ「完全非圧縮」と言えるのではなかろうか。・・・注2 A機では無駄なセクター(無駄とは使用する可能性が無いという意味で)消費を節約するために、録音前のソング初期化の時点で使用トラック数を定義しなければならない。このトラック数は録音途中で変更できないが、どうしても変更する必要が有る場合は、新たなソングを必要トラック数で初期化し、そこへコピーする必要がある。これは予想によって的確なトラック数を確保しておけば良い問題で、やむなく変更の必要が有る場合は対応できるので、問題とは言えないと思われる。